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@実験データから液体分子やコロイド粒子らの集団構造を求める分析理論の研究

AFM(原子間力顕微鏡)やSFA(表面力測定装置)、レーザーピンセットなどで測定される液中における二体間のフォースカーブを元に、界面上または界面と界面に挟まれた拘束空間中における液体分子やコロイド粒子の数密度分布を求める分析理論を研究しています。これまでAFMSFA、レーザーピンセットで二体間のフォースカーブが測定されていましたが、従来の分析手法ではフォースカーブの形状から界面における液体分子やコロイド粒子の数密度分布をなんとなくイメージする事しかできませんでした。そのためこの分野では、フォースカーブから界面における数密度分布を求める分析理論が必要とされてきました。そこで私は世界に先駆けその分析理論の導出と実証を行いました。この分析理論によって初めてAFMSFA、レーザーピンセットが数密度分布の測定装置として使える様になりました。数密度分布が求まると、液体分子やコロイド粒子の表面過剰量が分かります。また、液体分子orコロイド粒子と基板との間の親和性の度合いをミクロなレベルで評価する事もできます。

私は自身の専門である液体の統計力学と物理化学を(小さくとも)何らかの形で社会に貢献できればという思いでこのような分析理論の研究を始めました。この分析理論によって、薬品、化粧品、食品、洗剤、塗料、潤滑剤などの新しい評価が可能となります。また、基板上で層構造化しているコロイド粒子の密度分布を分析理論から求める事で、様々な条件(例:溶媒やコロイド粒子の種類、pH、イオン強度、高分子電解質や界面活性剤などの溶質の濃度、コロイド粒子表面の電離度や分子修飾率)における層構造化のメカニズムも分かってきます。この研究から分かった物理化学的知見をもとに量子ドットやフォトニック結晶として注目されているコロイド結晶作りの技術開発を促進できればと考えています。ちなみに、量子ドットは例えば次世代の太陽光発電や光源の材料として注目されており、フォトニック結晶は次世代の光ファイバーや構造色を有した塗料として注目されています。

ところで、基板上における水の数密度分布(水和構造)の計測には私の分析理論とAFMを利用する他に、X線反射率測定も利用可能です。しかしながら、X線反射率測定の場合、数mm四方もしくはcm四方において原子レベルでフラットな平面を基板上に用意する必要があります。その様な基板はとある無機固体結晶であれば用意できますが、有機分子結晶や生体膜ではほぼ不可能です。一方、AFMにおけるフォースカーブ測定ではその様な強い拘束条件はありません。また、既に無機固体結晶だけでなく、有機分子結晶や疑似生体膜上でもフォースカーブが測定されています。よって、私の分析理論とAFMの組み合わせにより、有機分子結晶や生体膜上の水和構造の可視化が期待されます。

 

AFM

 

SFA

 

Optical tweezers

 

 

 

AX線小角散乱や中性子小角散乱から得られる構造因子の解析理論の開発

  X線小角散乱(SAXS)や中性子小角散乱(SANS)をタンパク質溶液やコロイド分散系に適用すると、バルク中における粒子―粒子間の二体分布関数の情報を反映した「構造因子」なるものが得られます。しかしながら、超低波数側と高波数側の構造因子は装置の制約上測定できません。その不十分な構造因子からバルク中における粒子―粒子間の二体分布関数を求める際、通常はモデルポテンシャル(例:DLVOポテンシャル、湯川ポテンシャル)によるフィッティングを用い、構造因子から粒子―粒子間の二体分布関数を求めます。しかし、モデルポテンシャルありきで得られた二体分布関数とその二体ポテンシャルには、疎水性相互作用や高分子電解質の効果、粒子間距離に依存した粒子表面の電離度の変化など、複雑な効果は含まれず、正しく実験情報(構造因子)を反映した結果を得る事は困難です。このままでは、粒子間相互作用の理解を深めにくいだけでなく、合成・開発された機能性コロイド粒子同士の相互作用に上記の複雑な効果が大きく含まれていた場合に、正しい分析ができません。そのような背景から、我々はモデルポテンシャルフリーな構造因子の解析手法を研究しています。この研究もまた、薬品や化粧品、食品、洗剤、塗料、コロイド結晶、潤滑剤の研究開発に役立つと考えられます。また、この研究で求める粒子―粒子間の二体分布関数は上記研究@のインプットデータとして利用する事もあるので、その研究の発展のためにも重要な研究です。

 

 

Bイオン液体中の二体間相互作用の研究

 イオン液体はアニオンとカチオンからなる常温で液体の物質です。イオン液体は合成・自己組織化・抽出と分離・粒子の安定的分散媒といった用途で利用され、水や有機溶媒に代わる第三の液体として注目されています。そこで、イオン液体中における粒子―粒子間の相互作用について液体の統計力学を用いて研究をしています。計算によって、同符号に帯電した粒子同士なら通常反発し合うにも関わらず、その粒子同士がとある距離間隔を保ちつつ安定化されたり、目立った相互作用を示さないはずの帯電した粒子と非帯電の粒子の間で斥力が生じたりと、イオン液体特有の興味深い性質がいくつか判明しました。また、イオン液体中の相互作用はしばしば静電相互作用によるエネルギー的側面から説明される事がよくあるのですが、本当にエネルギー的側面のみから説明して良いのか?という疑問があります。そこで、イオン液体中における二体間相互作用におけるエントロピーの役割についても研究しています。これによって、これまで静電相互作用から説明されていたとある安定な配置状態が、実は系全体のエントロピー上昇により安定化されるという事も判明しました。その他、イオン液体中AFMによって測定されるフォースカーブの解釈方法も研究しています。

 

 

C整列側鎖集団の秩序-無秩序配向の理論研究

等間隔一列に並んだ側鎖集団の配向性に関して理論研究をしています。液体の効果によって、側鎖集団の配向性が平行⇔ランダム⇔逆平行と変化する現象を理論的に発見しました。微小な世界で起こる興味深い物性を理論先行で探す事に挑戦しています。

 

Solvent mediated one dimensional Ising system

 

D光沢のある食品作り

コロイド表面化学等を利用して光沢のある食品作りにチャレンジしています。より具体的に言うと、金属アレルギーフリーなアラザンやラメの作成に取り組んでます。天野HPトップからothersへ進み、memoというページで簡単な説明(覚え書き)を書きました。

 

 

E化粧品関連の基礎研究

 農学部の学生に適した研究もしようという事で、コロイド表面化学等を利用した化粧品の基礎研究を始めました。サンスクリーン剤の塗りむらと紫外線透過率の関係など研究しています。arXiv:2005.01293 [physics.chem-ph] (2020).